チームで取り組む「産後ケア」
産後ケアの推進について思うこと。(考察Ⅰ)
「安心して出産と産後を迎えたい。」
「出産のことも産後のことも、出来るだけの準備をしておきたい。」
「出来るだけのことはやって、赤ちゃんを無事に産んであげたい。」
お腹に新しい命を宿した時から、多くのお母さんたちが切に願うことではないだろうか。
妊娠も出産も産後も、自分だけでは思い通りにいかないことの連続で、いつも小さな不安は簡単に訪れる。その都度、今の自分に出来ることを探しながら、小さな不安を打ち消して準備を進めていく妊娠期間が続く。
妊娠中どうしても打ち消せないのが、産後の自分の心身の状態がどうなっているかは分からないという不安。これは誰にも分らないので、もし自分が動けなくても何とかなるようにと準備しておきたい気持ちは、上の子がいれば尚更、お母さんのなかに少なからずあるのではないでだろうか。
そんな時に身内や親しい友だちに頼れるに越したことはないが、近くに頼れる人がいない場合、産後ケアやサポート機関と繋がっておきたいと思うのはごく自然なことだと思う。
私自身、妊娠、出産、子育ても経験しながら、子育て支援の活動のなかでも多くのお母さんたちとお話するなかで、「産後ケア」という言葉はとても身近に感じている。しかしながら、一歩外へ出てみると、まだまだ「産後ケア」という言葉すら認知が進んでいない。
「(産後ケアの取り組みが進まないのは)ニーズがごく僅かなので、、、」と、相談窓口で言われてしまうほどのレベルである。
産後ケアはこんなに必要とされていることなのに、なぜそのように捉えられがちなのか(後回しにされがち)という視点で考えてみると、その負の負担を、一身にお母さんが引き受けてしまっていて、その多くがそのまま家で閉じこもり過ごしているままに過ぎてしまう、ということがあげられるのではと考えらる。
家のなかのことは、外からは見えない。外に出ているお母さんたちは、少し元気になった姿だから。外からは見えないけれども、家のなかで数カ月に及ぶ長期間じっと耐えている方も実はいて、ずっと後になってやっと繋がって「あの時しんどかったんだ。」と教えてくれることもある。その時の気持ちがきっかけとなって、子育て支援の活動を始めたという方が私の周りにもたくさんいる。
これは、ニーズの声が僅かということではなくて、毎日の子育てや日常に必死で、声をあげたくてもあげられないまま時が過ぎてしまう、ということも声が多く埋もれてしまう原因のひとつではないだろうか。お母さんたちが負の負担を一身に我慢するという時代は、そろそろもっと分かりやすく切り替えてもいいのではないか。
核家族世帯が8割を越えるなか(*1)、近くに頼れる身内や友だちがいない場合、いても頼ることが出来ない場合、やはり必要となってくるのは産後ケア、サポートのサービスとなる。産後ケアとひと言で言っても、そのニーズも多岐に渡り、個人のニーズに寄り添っていける柔軟性も必要となる。肉体的な負担の軽減はもちろんのこと、心の負担の軽減も大きな役割のひとつであり、それは相手の気持ちを理解しようとする態度から始まり、適切な判断と見極める力も必要になる。ひととひとの間のことなので、一概にマニュアルのようなものに全てをあてはめられない点がその難しさではないだろうか。
「産後ケア」(*2)を推進していくなかで、課題は多いが、「産後ケア」がいかに重要な役割であるかを十分に知っているメンバーが香芝市だけではなく、周辺地域にも多く存在し、それぞれに地道な活動を進めていることは、この局面を何とか動かす力になりうると私は考えている。現在8つの自治体と提携を結んでいる心友助産院さん(*3)にも産後ケアについて利用者さんなどの相談をさせていただいているが、その変わらない包容力とブレない覚悟にいつも多くの力をいただきながら、私も自分の役割を探している。
「産後ケア・サポートはこれがあれば大丈夫」というような単純なものではなく、多岐に渡るニーズやサポートへの配慮は、絶え間なく心尽くしていかねばならない。(*4) それでも少しでも取組みが加速できるよう、現場で活動しているメンバーたちと随時情報交換をしながら、諦めずに進めていきたい。
(*1) 核家族世帯の割合82.7% 平成29年国民生活基礎調査参考
(*2)2021年(令和3年)4月1日施行「母子保健法の一部を改正する法律」。心身の不調や育児不安等を抱える出産後1年以内(改正前「出産後4カ月」)の母親とその子を対象に、産後ケア事業の全国展開を図ることを目的としている。(厚生労働省 産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン)
(*3) 心友助産院(広陵町) 産後ケア契約市町村:安堵町・斑鳩町・王寺町・河合町・川西町・上牧町・広陵町・三郷町 :心友助産院HP参考
(*4) 産後1年未満に死亡した女性の死因で最も多いのは「自殺」:2015〜16年、国立成育医療研究センター調査参考
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